こんにちは。RYUです。今日は、保育を考えるための良本!!!保育者なら一度は読んでほしい一冊!を紹介します。この本です↓
浜谷直人・江藤咲愛 2015『場面の切り替えから保育を見直す』新読書社
保育関連の本の中で学びの多かった良書です。幼稚園教諭である江藤先生の実践を、研究者である浜谷先生が紐解き探求していった内容です。ほんまに学ぶことが多いです。
保育者(※)や親であるなら、子供の切り替えのことで悩んだことは多いはず。保育場面で、生活場面で、うまく切り替えられない、という姿は、困った姿として保育や子育ての悩みとして、また、実践報告として、よく挙げられます。
※僕は保育士ではありませんが保育〔療育〕に直接携わる者でもあるので、保育士ではなく保育者と表現します
僕も療育に携わる者として、この“切り替えられなさ”というものにはさんざん悩まされてきました。
そんな僕がこの本で学んだことをまとめると⇓
切り替えはCゾーンで
保育の大切な目標
自制心の本質
“切り替えられない”から“切り替えられる”へ
切り替えはCゾーンで
切り替えはCゾーンで。は?なんのこっちゃ??ですよね。
次の図を見てください

Cゾーンとは、遊びの盛り上がりが最高潮を過ぎて終息へと向かう最中のことです。遊びが始まり、発展し、面白さがピークに達し、十分に遊びこんで楽しさや満足感を味わい、そして、しぼんでいこうとするその時(一定の幅があるのでゾーンと呼ぶのがふさわしい)が、最も切り替えやすいと言います。
つまり、満足するほど遊んで、少し飽きてきた頃・勢いがなくなってきた頃に、遊びの区切りで、片づけの声をかけ、次の活動などへ促すと、すっと切り替えやすい、ということです。
逆に、他のA・B・D地点では、終わりを告げられても切り替えがしにくいのです。
Aは、やっとちょっと面白くなってきたところ…そりゃ今からもっと遊びたいですよね、切り替えなんてできやしません。
Bは、今が最高潮に面白い時です。やめられません!
Dは、気持ち的にだらけてきて張りがなくなり、次へ向かうエネルギーがたりません。切り替えにくいのです。
ここから学べることは、良き切り替えには、
- “活動が充実して達成感や満足感を味わう”ことが前提となるということ、そして、
- 切り替えにはタイミングも重要、
ということです。個人の内面や特性だけの問題ではありません(これらも要因の内ですが主たるものではないということです)。
これは、普段の保育実践の中でも感じることです。うまく次の活動に切り替えてもらうには、遊びを楽しむことと声掛けのタイミングがとても大切です。
例を挙げましょう。
園庭開放に来られたお子さんが砂場でお皿に砂を入れてままごとを楽しんでいます。そこへ、全体の集まりの時間になったため「お片付けをしましょう」との放送がかかります。
親御さんは皿に入れて楽しく作っている最中に「○○ちゃん、片付けるよ」と声をかけ、それでも子どもが遊びをやめられないと道具を片付けようとします。当然子どもは“もっと遊ぶ”と反発します。
この時、保育者としては、片付けを促すのではなく、その子の遊びに入り、相手役となって一緒にちょっと遊びを楽しみます。そして、お料理を作りあげ、一緒に頂きますし、食べ終わった~とごちそうさままでします。その時点で「面白かったね。おしまいしようか。あっちで○○やってるよ。行こう。」と切り替えを促す声掛けをすると、多くのお子さんが切り替えられます。
保育の大切な目標
保育の目標とは何でしょうか?あなたがプロの保育者であるなら、自分の保育の目標を考えて、言葉にしてみて下さい。
江藤先生は保育で大切なことは
『遊びことを楽しいと感じ、思いっきり遊びこむことができる子を育てる』
ことだと説き、それは
“集中して遊びにのめりこむような経験を通して子どもは育つ”という信念に基づいていると言います。
シンプルだけど、とても大切なこと。読んでてグッときました。
遊びをせんとや生まれけむ
梁塵秘抄より
戯れせんとや生まれけん
遊ぶ子供の声聞けば
わが身さへこそゆがるれ
子どもの遊びといえば、まず梁塵秘抄に収められたこの歌を思い浮かげる方も多いはず。
遊ぶために生まれてきたのだろうか?そうなんだろうか?どこかで反発しつつも、子供が遊ぶ声を耳にすると、やはりこの思いが湧き上がってくる。
人生の本質は遊びだ、人生楽しんでナンボ、なんて言う方もいるくらい、遊びは大切なんです。遊びの本質は楽しさです。
大人になると、きっと「遊び」が「仕事」に変わる。仕事を楽しいと感じ、思いっきり仕事に打ち込める人ってきっと結構幸せなんじゃないでしょうか?実際、輝いてる社会人って仕事を楽しんでいる。ゲームみたいだって言う人もいる。
この源泉を形作るのは、やはり幼少期です。
子供はよく遊んでいますか?
療育現場では、しばしば遊べないお子さんに出会います。もちろん、活き活きしていません。そんな子が、様々なかかわりの中で、遊べるようになってくると、表情がとても活き活きとなってきます。
思い切り遊ぶためには、思い切り楽しむためには、自分の五感で感じ、より楽しくなるように考え、試し、振り返り、再挑戦していく、というプロセスがあります。大人で言うPDCAサイクルにも近いですね。このプロセスを経ていくことは、次の自制心の発達にも影響します。
だから、しっかりと遊べる子どもにしていくことは大切なのです。
自制心の本質
4歳半頃になると、○○ダケレドモ××する、という思考様式であらわされる、いわゆる自制心が育ってくるといわれています。もっとしたいけれど交代する、寂しいけれどお留守番する、など、状況の中で、自分の気持ちを少し抑えて我慢する、といったニュアンスで語られることが多いです。
実際、年中・年長頃になると、言い聞かせると我慢できることがでてきます。こういう我慢することができる姿をもってして、自制心の芽生えと捉える方もいるかと思います。
が、自制心の本質は我慢できる能力ではありません。
自制心を支える気持ちは、○○したい!という欲求の方です。楽しくなるためにはどうしたらいいのかを考え、楽しく遊び続けるために折り合いをつけるのです。遊びたい気持ちが十分に豊かなので「待つ」「我慢する」ができるようになるのです。著者の言葉で言えば、
貪欲なほど遊びこみ、遊びを満喫して、その楽しさを知り、もっと楽しむためにはどうしたらいいか必死に考え工夫する延長上に、自制心がある
“健康的なわがまま”になっているとも言っています。
目から鱗でした。もう少し単純に、待てるようになる、我慢できるようになる、という風に理解していました。
楽しむためには、準備したり我慢したり待ったり大人の話をよく聞いたりということが一定必要で、他者とうまくやっていくことも必要です。そして、そういう経験を積み重ねていること。
こういうのが、道徳的に「良い」ことだからそうしましょう、と先に教え込むものではないのです。僕にとって、このことは大きな学びでした。皆さんはいかがでしょうか?
“切り替えられない”から“切り替えられるへ”
切り替えられない子を切り替えられる子へと変えていくには、大人としてどうしていけばいいのでしょうか?
結論から言えば、子供の気持ちを尊重した保育/子育てを積み重ねるしかない と言います。
だって、切り替えられない姿というのは、問題としてクローズアップされるようになったその時に突如として始まったわけではないから。それまでの、子どもへの関わりの積み重ねが、満たされなさやわだかまりが、子供をして“切り替えられない”姿として発露しむのです。
魔法のようなやり方はないのか、とがっかりされたかもしれませんが、僕も著者の主張に賛成です。小手先の技でなんとかなる問題ではないのです。なんとかなってしまう場合はあるかもしれませんが、それはきっと根本解決ではありません。
余談ですが、自閉症スペクトラム障害の児への対応として、視覚支援と称して写真や絵カードでこちらの意図を伝える場合があります。(例えばコレ⇓)
しかし、誤解が多く、写真やカードは見せて子供を動かす道具、と思っている支援者の方もおられます。視覚支援は、言葉だけでは伝わらないこちらの意図をより伝えやすくするための道具なのです。意図を届けるまでが役割なのです。伝わった結果、それはイヤなんだ、となるのもとても普通のことなのです。
うまく切り替えられる子になっていくには、自分の気持ちを大切にしてもらい、満足して、切り替え、次の活動に意欲的に向かっていく経験を積み重ねていくしかないのです。
まとめ
以上のように、この本は、うまく切り替えさせるための本ではなく、切り替えから保育や子育てを見直すための知恵がつまった1冊です。
子供の気持ちを尊重し、子供を育てていくという姿勢で、我が身のやり方とその結果をつぶさに見つめ、まずいところは向き合って変えていく。そうやって、子どもの気持ちを大切にして、満足できるようにして切り替え、次の活動に意欲的に向かえるようにしていく、ということを繰り返していくことで、自制心が育まれ、自分の感じ方を基盤に自分で考え、遊びこめる健康的な子どもに育っていくのだと思います。
最後に、切り替えのタイミングという意味でとても大切なことを述べています。
大人社会の時間の形をそのまま幼児期に持ち込まない
保育では、何時何分から○○だから、その時間にはこの活動を終わって…と時計の時間を目安に活動を切り替えさせていることが多いかと思います。子供の遊びの盛り上がり盛り下がり具合が目安ではないですよね?(こういう園があったら素晴らしいです。)かくいう僕の勤める所も、基本的には時間で区切っています。
しかし、これまでの主張から言えば、これは切り替えにも子供の発達的にもよくはありません。致し方ない部分は多々あると思いますが、子供の時間の流れというものも意識して、変えるべき変えられるものがあれば変えていってみて下さい。
浜谷直人・江藤咲愛 2015『場面の切り替えから保育を見直すー遊びこむ実践で仲間意識が育つ』新読書社
まとめ
いかがでしたでしょうか?切り替えはCゾーンで。大人の時間の流れをそのままの形で幼児期の子に持ち込まない。子供の気持ちを尊重した関わりをする。
保育者はもちろん、子育て中の方、仕事として、ご近所さんとして、子どもに関わることがある方はぜひ本を手に取って見て下さい。
最後まで読んで下さり、ありがとうございます。ご感想、コメント下さい。感じたこと、考えたこと、学んだことなどを言葉にすることで学びは深まりますし、記憶も定着しやすくなりますよ。ではまた。
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自分らしく生きる、自分自身でいることをテーマにブログを書いてます。
自分を押し殺し、他人の価値観や意見ばかり気にする ❝いい子ちゃん❞ だった過去。自分のことが大嫌いでした。
そんな自分をなんとかしたいと心理学を学びプロの心理士として仕事をするも、自分嫌いは克服できずにいました。
そこへ、30代でゲシュタルト療法を受け、人生が180°変わりました。
自分が好きになり、
自分の意見や考えを軸に行動できるようになり、
やりたいことややってみたいことにも素直に食指をのばせるようになりました。
本もたくさん読むようになり、さまざまな考え方を柔軟に取り入れられるようになりました。
同じように悩んだことがある方や、今現在自分の生き方に悩む方へ。
あなたらしく生きる、あなた自身でいるための手掛かりやきっかけがみつかりますように、と僕の経験や学びを発信しています。
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